上司から「〇〇さんならではの目線でぶっ飛んだアイデアを出してほしい」と言われ、アイデア出しを行い企画書をまとめつつも、ちょっとアイデアが飛んじゃったかな?でも、求めている感じだったなと思い意気揚々と提案したのに、「もっと堅実なのにしてよ」と言われてしまった・・・。
前と言っていたことが違うし、フィードバックも「堅実に」、とだけ。それえは例え以前紹介したアイデア出しの本で論理的にアイデア出しを行っても、また提案をしようという気になれませんよね。

もし、ここで「企画書をまとめてくれてありがとう。吹っ飛んでいて思い切りが良くていいね。自分じゃ思いつかなかったなぁ。ただ思い切りが良い分、本当にできるんだろうか?って感じてしまいそうだね。どうやって実現するか、今どういう風に考えているか教えてほしいな」と言ってくれたらどうでしょうか?
自分がやってきた事について感謝を述べてくれると、例え仕事だからやったとしても悪い気はしません。また、吹っ飛んだアイデアという要望にも応えられたんだと、嬉しくなります。一方で懸念点をあげていますが、一方的に押し付ける形ではなく一緒に考えようという姿勢が見て取れます。
こんな風にフィードバックを得られるなら、また良いアウトプットを出そうと前向きに仕事に取り組む事が出来るのではないでしょうか。このように生産性の高い仕事を行うためには、心理的安全性が高いチームである事が大事です。そこで今回は、下記の本のレビューをしていきたいと思います。
本のかんたんな紹介
2023年に東洋経済新報社から発売されました。作者はピョートル・フェリクス・グジバチ氏。一瞬洋書?と思いますが、和書で当然翻訳はありません。作者はGoogleアジア・パシフィックの元人財・組織開発責任者であり、心理的安全性という言葉が広がるきっかけとなったGoogleにいらっしゃった方です。
対象読者
管理職やマネジャー職を対象としていますが、これらマネジメント層でなくてもチームとして働く人にもおすすめです。なぜなら、心理的安全性が高いチームにしていくにはメンバー1人1人の主体的な取り組みが欠かせないためです。どうせならチームとして成果を出しつつ、良いチームで働きたいではないでしょうか?そのヒントが得られるはずです。
逆に1人で仕事をする人はあまり参考にならないかも・・・?
本書で得られること
本章は8章からなり、理解編(1,2章)→マインドセット編(3~5章)→実践編(6~8章)という流れになっています。そのため、心理的安全性とはなんぞや?という座学的なところから、実際に職場でどういう心持・言動例がふんだんに書かれいます。
そのため、読んでみて早速明日からどれか試してみようと行動にうつす事が出来るので心理的安全性を初めて学ぶ人や、心理的安全性を一度学んだけど具体的にどういう風にしたらいいんだろう?という方にも得るものがあるでしょう。
本書を選定した理由
仕事でブレーンストーミング(以下ブレスト)を行った際に、ブレストのルールとして「相手の意見を否定しない」を知った時に衝撃を受けました。企画職で様々なアイデアを述べていくのですが、たいてい「もうあるよね」はお決まりのフレーズで、出たアイデアがしぼんでしまう・・・という事が多かった時に、このルールは衝撃だったのです。
しかし、だんだんブレストでない場面でも相手のいう事を否定せず「それってどういうこと?」とむしろ膨らませる事が多くなり、働きやすいと感じたことがあります。なんとなく、心理的安全性ってこんな事なのかなーと思い本書を選んだのがきっかけです。
マネジメント層向けの本ですが、マネジメント層でない私から見てここは部下として意識したほうがいいのでは?と思う事を抽出してみました。
本書を読んでみて
印象に残ったこと①心理的安全性とは手段である
第1,2章で心理的安全性とは?について学びます。まず本書で心理的安全性について以下の記述があります。
心理的安全性はゴールではなく手段です。ゴールが何かというと、チームで成果をあげることです。それに資する行為であれば、厳しい意見や侃々諤々の議論は望むところ。
心理的安全性を高くする、が目的に捉えられがちですがあくまで手段です。会社としては利益を出していかなければ存続出来ません。そのためにはチームとしてそれに貢献出来るように成果を出す必要があります。成果を出す方法は様々な手段がありますが、その1つに「心理的安全性が高いチーム」があると本書は述べています。
心理的安全性が高い、を目的にしてはいけない。心理的安全性が高くても会社に貢献出来ていないようでは、ちょっと違うよね、という事です。
なお、本書で生産性の高いチームは心理的安全性以外にも4つの要素があるとされています。
- インパクト(自分の仕事に意義があると感じているか
- 仕事の意味(自分の仕事に意味があるか
- 構造の明確さ(役割や目標が明確になっているか
- 相互信頼(チームメンバーが成果を出してくれると感じている
上記と心理的安全性をまとめると、生産性の高いチームは以下のチームとしています。
メンバー一人ひとりに目的意識があり、役割や仕事のプロセスが明確であり、相互信頼と心理的安全性があること
では、ずっと言っている心理的安全性を別の言い方で表現するとどんな定義になるでしょうか?本書の筆者は心理的安全性を以下のように解釈しています。
「メンバーがネガティブなプレッシャーを受けずに自分らしくいられる状態」
「お互いに高めあえる関係を持って、建設的な意見の対立が奨励されること」
心理的安全性の高い職場ではNiceではなくkindのある職場と述べています。
Niceはいいね!と同意するので、一見まとまっていて仲の良いチームにみえるかもしれません。しかし、本心はどう考えているか分かりません。 例えばチームメンバーから上司に提案するというので内容を聞いたところ、あなたは「これだと、上司に否定されそうだな・・・」と思いつつも空気を壊したくないという思いから、ついつい「いいね!」と言ってしまう。
それに気を良くしたチームメンバーは上司提案してみたところ、検討が足りないと返されてしまいました。チームにはいいね!と言ってくれたのに・・・すっかりと意気消沈し、周囲も気を使ってしまいなんだか気まずい空気がチームに流れてしまう・・・。
一方、kindは思いやりです。先ほどのケースなら「提案するなんてすごいじゃん。この点はもう少し深堀して検討した方がいいと思う。例えばこういうケースのときは・・・」という風に、上司に納得してもらえるには?という目線を持って接する事が考えられます。
Niceとの違い、分かりましたでしょうか?こうやって見るとNiceはぱっと見、和気あいあいしてて”いい感じ”に見えますが、我関せずと相手を突っぱねているような点があるかもしれません。 Kindは、本当にそうだろうか?と考えていくことが出来る。チーム誰かの仕事を、自分ごととして捉える事が出来る。
kindを実現するため、大事な事は “自分にも相手にも誠実であること“だと本書は述べています。
印象に残ったこと②ローコンテクスト文化にする
ここからは、本書はマネジメント層を主な対象としていますが、マネジメント層ではない一般社員でも心理的安全性が高い職場を実現するため、チームの一員として心得ておくと良いと思った内容を紹介したいと思います。まず一つ目が、ローコンテクスト文化にする、です。
日本の企業はハイコンテクスト文化と言われています。
ハイコンテクストとは、コミュニケーションの土台となる言葉や価値観が共有されている状態のこと
と本書は説明しています。また、はっきり言わない曖昧な言い回しが良しとされたりする文化でもあります。はっきり言うと逆に強い言葉になってしまうかな?と遠慮してしまう事はだれしも経験があるのではないでしょうか。
これと心理的安全性とどう関係があるのかというと本書では以下のように説明しています。
ハイコンテクストな文化にあぐらをかいているうちに、相互理解が不足して、心理的安全性が置き去りにされています
いまや中途採用の方や女性の社会進出、外国人労働者など多様な方が同じ職場にいることは当たり前ではなくなりました。その結果、
相手が自分の期待どおりにならない場面に遭遇するたびに、相手の思惑が読めずに不安や猜疑心を抱いて、チームづくりがうまく出来ない現状があるのです
と、心理的安全性が低下すると本書は指摘します。心理的安全性を高めるため、ローコンテクストなコミュニケーションを行う必要があります。それはどんなコミュニケーションかというと、
みんな違う考え方や価値観を持っているから、言葉に出して言わないとわからない
と意識しながらコミュニケーションをすることです。最初は慣れなくてくどいかな?と思うかもしれませんが、とにかく言葉にする。私はよく使う言い回しとして、「確認させていただきたいのですが」「これの定義って具体的に何になりますか?」等の枕詞?をつける事が多いです。
聴覚障害者目線からすると、音声認識ソフトで文字起こしを行って会話の内容を理解する場面もあるため、ローコンテクスト文化でコミュニケーションをとってほしいなぁと感じます。言葉にしないと文字起こしが出来ませんので・・・。その理屈で言うと言語が異なる外国人とのコミュニケーションでも同じことが言えるかもしれません。
また、自分が聴覚障害である事を逆手にとって、「うまく聞き取れなかったのですが確認したいのですが」「聞き間違いがあるといけないので」と言いながら内容の聞き取りとかすることもあります。
同じ性別同じ年齢層でも、いまや様々な価値観を持つ人が増えています。同じ考え方だよね、とコミュニケーションの省エネすることなく、言葉にして共通認識となっているか?を意識するようにしましょう。
印象に残ったこと③チームメンバーに対し、色眼鏡で見てはいけない
こちらもチームとしての心得になります。我々は相手に何らかのラベリングする傾向があるといわれています。相手を得体のしれない存在としておいておくよりも、何らかのラベルを貼って相手の事を分かった気になっておいた方が、安心感があるのでしょう。
そのようにラベルする結果、仕事上では「あの人は仕事が出来ない」とか「あの人は気難しい人だ」といった思い込み、色眼鏡でその人を見てしまう事があります。しかし、本書では、
自分に見えている相手の姿が、その状況における相手の姿を切り取ったものでしかありません
例えば、先ほどの「仕事が出来ない」はたまたまある業務がその人にとって未知の分野で手も足も出ない領域の業務だったのかもしれません。「気難しい」も急ぎ案件で本日中に対応してほしいと頼まれたが、実は家庭の事情で早く退勤する予定で、そのことを業務開始したタイミングでお伝えしていたのに頼まれて苦虫を嚙み潰したような顔をしてしまい「気難しい」と思われたのかもしれません。
能力はその人の一側面でしかないため、その人を否定するようなラベルは危険だと本書は警告を鳴らします。
目に見える成果やパフォーマンスも、その人が置かれた環境で見せるその人の一面でしかない
得意/不得意は人それぞれです。仕事の進め方や物事の考え方もそれぞれです。それぞれの得意な事を生かすことができれば「仕事が出来ない人」なんていない、だからこそ色眼鏡で思考停止して相手の理解をやめることは危険です。マネージャ層は特に、部下のパフォーマンスをあげるために適材適所と業務を当てられるように意識する必要があります。
一方で、マネージャ層でない人でも、業務にかかわる人らを色眼鏡で見ないように注意する必要があると私は思います。なぜなら、そうすることで無意識に相手を見下したり逆に過度に壁を作ってしまい、人間関係がぎくしゃくしてしまう事があるからです。
例えば、「あの人は話が長い」と思い込んでいれば、その人が話を始めようならば途中で遮って話題を奪ってしまったり、「前、イライラした口調で話してきた。そういう人なら自分だって・・・」と考えて喧嘩腰になってしまったり・・・。
ならば、ラベリングしないようにすればよいのか?と考えそうですが、無意識にやっている事なのでラベリングしない!と強く誓うのも、それはそれで疲労してしまいます。無意識にラベルしてしまう事を素直に認め、ある時に「〇〇さんはこんな人だ」という思いが出た時に、「本当にそうだろうか?」と自答自問する、という考え方のクセを付けるのはどうでしょうか。
また、他人のふるまいに過度に反応することなく、「イライラした口調だったなー腹立つなぁ。でも、何か自分迷惑かけるような事したっけ?・・・思いつかないなぁ。たまたまイライラしてただけかも」とある意味相手の感情にそこまで付き合わない、のも一つかもしれません。
つまるところ、自分もそうやって他人にラベリング貼られています。自分では全く覚えていない言動で想像していなかったラベリングされていることもきっとあるでしょう。なんか悔しくないですか。たまたまその時だけ、ほんの一面で自分をこういう人だと、分かった気にされるのは気持ちが良いものではありません。
だからこそ、無意識にラベリングをしてしまった後でも自答自問し、相手への理解を思考停止することなくどんどん相手の人となりをアップデートしていき、よりよい関係性を築いていきたいものです。
まとめ
今回は心理的安全性についての書籍を紹介しました。心理的安全性を高くする、は目的ではなく手段である(何の手段かというと、成果を出し企業に貢献する事)。心理的安全性が高い職場にするには、言語化するローコンテクスト文化な職場にすることや、色眼鏡でその人に対する思い込みをしないこと、といった方法がありました。
本書ではそれ以外の様々な方法が記載されていますので、心理的安全性が高い職場にするにはどうしたらよいのだろう?という時には助けになる本でしょう。
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