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【書評】新規事業着工力を高める - 新規事業や企画の進め方に悩んだら-

上司などに「新規事業の検討を始めて」「新しい企画を考えてほしい」と依頼があった時、具体的にどのように仕事を進めていけばよいのか悩む事があると思います。または、これまで新規事業検討を業務として行っていたが、この進め方で良いのだろうか・・・?と改めて業務の進め方を振り返りたい事もあるでしょう。

インターネットで「新規事業 進め方」といったキーワード検索すると様々な記事が出てきますが、体系的に学びたい!という方は下記の「新規事業着工力を高める」が参考になるのではないでしょうか。

目次

本のかんたんな紹介

本書は2023年8月23日に発売され、作者の内田有希昌さんはボストンコンサルティンググループ日本共同代表を務めていらっしゃいます。作者によりますと、この本を書こうと思ったきっかけは2つあり、優れたビジネスパーソンからここ30年の日本の成長率について憂うる話を聞いたことと、一方で、若い人達による活躍ぶりや筋の通った行動に日本の先行きは明るいのではないかといった声を聞いたことにあります。

若い人達が未来を信じ、成長の道筋を作っていけば、次世代に明るい時代をバトンタッチ出来るのではないかと考え、本書は経営リーダーや現場で実際に活動している人らの新規事業の着工が加速し、成功する新規事業の増加につながることを狙いとした書籍となっています。

対象読者

本書の主な対象は、

「既存企業に勤めている、マネジメント層及び現場のプレイヤー」

になります。既存企業とありますが、スタートアップ企業の方でも参考になると思います。本書は既存企業ならではの新規事業を着工する難しさや成功させるためのコツについて多く説明がなされています。そのため、スタートアップ企業の方でも一般的な新規事業の進め方を抑えたい!という方であれば参考になるのではないでしょうか。

マネジメント層はそもそも「新規事業検討」とは?を把握する事で主に部下である現場のプレイヤーに対し的確な指示を行ったり、各フェースで次のステップへ進めるかの判断を行ったりします。その考え方について記載されており、参考にすることが出来ます。

現場のプレイヤー、すなわち新規事業の検討を実際に行っていく方になりますが、進め方の全体像を知ることで今はどんな業務を行わないといけないか?といった立ち位置の把握、アイデア出し方法が記載されているので対象になります。

本書で得られること

新規事業の進め方のうち、着工ステージの進め方について学ぶ事が出来ます。本書では新規事業の進め方には以下5つのステージがあるとしています。

①着工ステージ
②ローンチ準備ステージ
③事業ローンチステージ
④成長加速ステージ
⑤既存ビジネス移行ステージ

本書では主に①着工ステージについて説明をしています。まさに何もないゼロからイチするためにどのように仕事を進めていけばよいか?と悩んでいる人には参考になるのではないでしょうか。

また、そもそも「新規事業」とは?についても解説がなされています。正直「新規事業」と言われても曖昧な概念で人によって捉え方が異なります。そのため、上記の着工ステージに入る前に、そもそもどの範囲で新規事業検討するか?をチームできちんと共有認識を持っていく大切さについて説いています。このあたりは特に業務指示をするマネジメント層が押さえておくべき箇所ではないかと思います。

本書を選定した理由

元々私は「先行開発」といったまた曖昧な概念を持つ部署からキャリアをスタートしています。ただ当時は既存のプロジェクトがありどういう事をやるのかの企画内容は決まっていたので、技術的な実現性を確認するために試作品を作る立場でした。なので要件定義や仕様及び設計検討、プログラミングといった業務を行っていました。

アイデア出し活動はたま~~~にあったレベルでした。

ところが部署の方針変更など色々あり、弊社で事業となる製品・サービスを企画する業務に携わるように。その時に過去のアイデア出し活動からなんとなくこんな事やったな・・・と手探りで進めていましたが、これで良いのかな?と思う事もありました。

またそもそもの「企画」ってどんな仕事なんだろう?についても調べると、商品企画や事業企画といった色々な「企画」も出てきて混乱するようになりました・・・。

今では、

商品企画は既存の事業(製品・サービス)を派生させた、新たな商品を考えていく活動
事業企画は既存の事業(製品・サービス)に捕らわれず、新たな商品を考えていく活動

と考えています。そうしたとき、上層部の方針からすると今の私が行う活動は「事業企画」だなと考え、本書に出会いました。まさに新規事業検討をどう進めるのがよいか?と悩んでいたので、本書で進め方を学ぶことが出来たのは大きな収穫でした。

本書を読んでみて

印象に残ったこと①方針設定の大事さ

本書では新規事業には5つのステージがあると述べており、その中でも最初の着工ステージについて重点的に説いています。着工ステージでも以下の5つのフェーズがあるとしています。

①方針設定
②事業アイデアの探索・幅だし
③ショートリスト化
④事業化詳細検討
⑤意思決定

それぞれのフェースで具体的に何をするのかは本書で読んでいただくとして、①方針設定はないがしろにされがちな所だなと感じました。新しいアイデアを考えよう!となると、だいたいこの辺の事業の課題とか考えてみようか・・・と具体的な内容に進みがちですが、それに対してストップをかけています。その理由として、

ある役員は、「そういうどこかで見たことがあるようなものではなく、世の中があっと驚くような、イノベーティブなものを目指すのが新規事業だ」と想いを表明する一方で、社長が「世の中にとって新規である必要はなく、我が社にとって新規かが重要だ。いたずらに新しさを求めるのではなく、我が社にとって新しい儲けの源泉を創るのが新規事業だ」と、実践的な持論を主張する場合もある。

引用にあるような、どこかで見たかも(聞いたかも)しれないような事態が起きてしまい、話が堂々巡りしてしまう。現場のプレイヤーとしては上層部の意見の食い違いで右往左往してしまい、「前と言う事が違うじゃないか・・・」と業務へのモチベーションが下がってしまう事にもなりかねません。

ただ、これはどっちが良い/悪いではなくて今はどのような観点でやりますか?が定まっていないが故の悲劇です。そのため、マネジメント層側が現場のプレイヤーに対し今はどんな観点で新規事業を行うのか?と明確に提示し、チームで共有認識を持つ事が大切と説いています。

また既存企業はこれまで企業活動を行ってきた製品・サービスがあるので、それらを軸にしてどれだけ離れた(ぶっ飛んだ)アイデアを考えるのかそうでないかを考える方法が説明されていて、これは分かりやすいなと感じました。人は対比すると考えやすかったりするので、自社内にある既存製品・サービスを軸にするのは考えやすいのではないでしょうか?また、案外と自社にはどんな製品・サービスがあるのかを知らなかったりするので、これを機に学び直しするのも良いですね。

印象に残ったこと②誰にどんな価値を与えるか/ユーザにこだわり続ける

「フェーズ②事業アイデアの探索・幅だし」に記載されている、

骨格にあたるものは、あらゆる事業で最も重要な要素である、「誰に」「何の価値を」「どのようなビジネスモデルで」提供するのか、というところになる。

また、巻末にある進め方についての要諦にも以下のような記載があります。

進め方③ユーザにこだわり続ける

新規事業は既存事業以上にサプライヤー目線が強くなり、ユーザ目線が弱くなりがちである。

この「誰に」「どんな価値を与えるのか」は本書以外にも企画検討の書籍や動画でも合言葉かってくらいあちこちで見かけるキーワードです。本書ではビジネスモデルにも言及していますが、もしビジネスモデルが全く思いつかずアイデア出しが止まってしまうくらいなら、まずは「誰に」「どんな価値を与えるのか」だけでもアウトプットとして出すと良いのではないかなと思っています。

つまりユーザには我々からの製品またはサービスを通して、どうなってほしいかを考え抜くことになります。そのため、弊社ではこういう技術があるからこの技術を使ってほしいという思いで考えてしまうと、サプライヤー目線が強くなってしまいます。しかし技術はあくまで手段にすぎないので、ユーザをある状態にしたい、としたとき本当にその技術が最適かというと、そうとは限りません。

そのため、「弊社にはこれがあるから・・・」という考えは一旦置いて、ユーザの課題は何か?よりよくするにはどういうものが欲しいのだろう?と考えて「誰に」「どんな価値を」へと落とし込むのがユーザ目線に沿った考え方になります。ある程度アイデアが固まって話が進み、実現方法を考える段階になったら弊社の技術をどう応用できるか?と考えていくと良いのではないかと思います。

印象に残ったこと③ロングリスト化

このように定石的アプローチを用いて、多くの、良さそうな事業アイデアをリストアップし、「ロングリスト」を作成できれば、このフェーズでの目的は達成されたことになり、次のフェーズに進めることになる。

印象に残ったこと②と同じ「フェーズ②事業アイデアの探索・幅だし」でのアウトプットに「ロングリスト」というものがあります。本書で印象に残ったことというよりは具体的な仕事の進め方になってしまいますが、とにかく新規事業とかアイデア出しをやる人はこのロングリストをエクセルないしドキュメントに残してほしいと思います。

本書は新規事業着工力を高める事を目的としていますが、それでも新規事業がスムーズにとんとん拍子にいくことは難しいです。既存企業で大きな企業になるとなおさら。そうすると、うまくいかない事で仕事へのモチベーションが下がってしまったり、自分の仕事がきちんと評価されているだろうか?と不安になってしまいます。

だからこそ、自分が考えたことをとにかく可視化する、文章でもラフな絵でも良いので残すべきではないかと思います。ではロングリストのアウトプットって具体的に何?となりますが、私の場合はエクセルで下記のように4列をヘッダーに設けて、あとは出たアイデアを色々書いていったものをアウトプットにしています。

誰がどんな課題を持っているかどうやって解決するかどんな価値を提供出来るか

このようにまとめる事でチームにレビューを行ったときに、こんな課題があるならこういう解決方法もあるのではないか?というアイデアや、このユーザだとこういう困りごと(課題)がありそうだよね、と色々意見を引き出す事が出来るメリットがあります。

こうやって形に残すことで、たとえ今回のアイデアが全面的にボツだったとしてもこういう事を考えてきた、という自分の仕事の履歴を残す事が出来ます。仕事の成果が見えづらい所だからこそ、可視化にこだわり自分のモチベーションを維持していっています。

まとめ

今回は「新規事業着工力を高める」についての紹介でした。何か企画書作ってよ、と指示されたもののどう進めたらよいかが分からない人には教科書的な位置づけとして参考になる本だと思います。システム開発は要件定義して仕様決めて設計して・・・と進め方のプロセスが明確ですが、企画はシステム開発に比べると進め方が曖昧というかコレ!という進め方が定着していないように感じます。

だからこそ本書をベースにして、自社にあったやり方にやり方にしてみたりとか、アイデア出し手法をもっと他にも知りたいとなれば他書籍を参考にするなどの活動をしていけば、自分なりの企画の進め方が出来上がり、周囲にも体系的に説明出来るものになるのではないかと思います。

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